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「 誰かが憎む人は誰かの愛する人 」映画スリー・ビルボードには今年のオクデミー賞を捧げたい。<ネタバレあり>

重い?深い?そんなカンタンな言葉では決して片付けられない、片付けてほしくない映画です。

あ。どうも。勝手に映画評論家の奥ノ谷です。

はい。書きました。皆さんの( 誰の? )期待に応えていよいよ書きましたよ。何時間もかけて(笑)

つーわけで、早速いきます。

「 誰かが憎む人は誰かの愛する人 」映画スリー・ビルボードには今年のオクデミー賞を捧げたい。

映画 スリー・ビルボード

アカデミー賞作品賞大本命のこの作品。そりゃ誰もが認める映画だろうよ。と思ったあなた。あなたは映画の事をまだまだ全然分かっていない。過去のアカデミー賞作品賞が全て素晴らしい映画だったかと言えばそうでもない。今回のこの映画も難解といえば難解。映画に慣れてなければ、この価値観を共有する事は難しい。だって映画は、最高!面白い!感動した!で決めるものではないからである。100人中99人がつまらないと言った映画でも、1人が面白いと言えば、それは面白い映画なんですから。( tohoシネマズで昔流れてたCMより )決めるのは本人。これだから映画は素晴らしい。

そんなボクが大絶賛する「 スリー・ビルボード 」のあらすじは、こんな感じ。

娘が殺されて約7カ月、警察の捜査は難航し、犯人逮捕を諦めているかにも思えた。その事に憤りを覚えた母親のミルドレッドは、閑散とした街の片隅にある30年以上も使用されてない3枚の広告看板に警察に対する抗議の文章を掲載。彼女が選んだ孤独な戦いが、町の住民へ、そして我々観客へも伝播し、価値観を根底から揺さぶる。その神髄は限りなく純粋な信念と愛。見る者をなぎ倒すほどのパワーに満ちたサスペンスムービー。

そして映画予告はこちら。是非見てくださいね。

ちゃんと見た?( CMに流れてる字幕と、映画で流れてる字幕が違うのもこれまた面白い。)

ほら。これだけでも観たくなったでしょう?(笑)

それに加えて、ボクが朝にこんなことを投稿するもんだから今すぐ映画館へ行きたい!と思ってしまうあなたの気持ち分かります!

問題の(笑)Facebookの投稿↓↓↓

今日もオシャレにも程がある奥ノ谷Dです。 2014年 震えるほどの衝撃「 ゴーン・ガール 」2015年 Not my fucking tempo!「 セッション 」2016年 それでも世界は素晴らしい「 ルーム 」 2017年 最…

奥ノ谷 圭祐さんの投稿 2018年2月5日(月)

 

オクデミー賞はやー。まだ2月なのにはやー(笑)

でも待って!まだ待って!短パン社長がそこまで絶賛するんだから!って期待に胸を膨らませて映画館へ足へ運ぶのはまだ早い。

何も映画が昨年の「ララランド」みたいに誰もが感動に溢れる作品ばかりじゃないから。過去にボクの大好きな「ゴーン・ガール」や「バードマン」を紹介してみんな観に行っちゃって、がっかりさせた経験もあるから。そこんとこよろしくね。

でもね。ボクはもう、この映画の事を思い出すだけで、会社の目の前から右手を上げてタクシーに乗って六本木ヒルズのtohoシネマズへ向かってしまいそう。それくらいボクの心は震えています。

脚本、演出、そして音楽までにも魅力され、俳優陣全員の演技にも圧巻

映画スリービルボード は、作品賞、監督賞、脚本賞だけではなく、主演のフランシス・マクドーマンドがアカデミー賞主演女優賞にもノミネート、そして助演男優賞には署長役のウディ・ハレルソン( 最近では猿の惑星に出演 )、警察官役のサム・ロックウェルも初のダブルでノミネートされています。

この3人全員にオクデミー賞をあげたい

 

ここからは若干のネタバレが含まれています。

※ 映画を鑑賞した人のみご覧ください。これから観ようと思ってる人は絶対に見ないでくださいね!

 

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母親ミルウッドが出した3つの広告看板には、「 娘はレイプで殺された 」「 犯人はまだ捕まっていない」「 ウィロビー(署長)は一体何をしているのか? 」と書かれていて、ミズーリ州の田舎町エビング( エビングという地名は架空の土地。)ではとっても信頼の厚い、ウェルビー署長が本人に直談判しに行く。

今も犯人逮捕の為に、日中夜駆け巡ってる。だからあの広告はフェアじゃないと。外してくれないか?と。

しかしながらその思いを曲げないミルウッド。そんな事してる間に今もまた誰かがレイプされて殺されている。黒人ばっかりの相手をしてるヒマあったらもっとしっかりやってくれと。

そう。映画の中では人種差別の発言が何度も出てきます。実はここもこの映画のポイントの1つでもあります。( 映画デトロイトを観た人は、あれ?同じシチュエーションなのかな?って感じる人も若干多いはず。)アメリカ南部は牧歌、そして差別、暴力の聖地とも呼ばれていますからね。

CMを観た人や、ストーリーを見た人は、そうか。その犯人探しの映画か!!もしくは、その犯人への復讐劇が行われるのか?!なんて勘違いしてる人も多いはず。ええ。だってボクもそう思ってましたから!

しかしそんな期待とは裏腹に、映画が進むとともに予想もできない展開が待っています。

またこの3つの看板は、実は、主人公ミルウッド、署長のウィロビー、そしてダメ警察官役のディクソン、3人を象徴されていると思われます。何度も看板が写るシーンがありますが、実はその看板の裏の映像も多かったのはお気づきですか?

まさに女クリントイーストウッド

人間には誰もが裏がある。この世に善き人はいない。エビング警察署の前にある広告社の若社長レッドが読む本「 善人はなかなかいない 」にもその意味が隠されています。( パンフレットの町山智浩さん( ヒロナガが大好きな映画評論家 )のレビューでも確認しました。)

ディクソンが現れた時に、きっと誰しもが、なんだこのクソ警察官。マジムカつく。早く捕まらないかな。って思いましたよね。

でも終盤を迎えるにつれて、あなたの印象はどう変わりました?

はい。彼こそが主役。彼こそが主演男優賞。それくらいの役柄を彼は担っているんです。

誰かが憎む人は誰かの愛する人

完全な善人はなかなかいないけど、完全な悪人もなかなかいない。あの看板にはそんな意味も込められてるのではないかと思います。誰かが憎む人は誰かの愛する人。そこにはとっても深い愛情が込められてると思いませんか?

あれだけ強そうで誰にも屈服しないミルドレッドも、実はところどころで繊細で優しい一面が描写されています。エビング広告社に初めて訪れた際に窓際の引っくり返った虫を起き上がらせたり、看板の下に花を備えるところだったり、そして最後の方のシーンになりますが、まさか元夫の19歳のガールフレンドの「 怒りは怒りを来たす 」で心が変化するだなんて思いもしないじゃないですか。

更には署長のウィロビー。彼こそ本当に真の善い人。と思われがちですが、逆にあの自殺は罪。色々と考えさせられる部分はありますけど、自分の命を断つという行為は罪。父と子と聖霊のみ名によって・・・。イエスキリストが生まれた場所も馬小屋でしたもんね。

その他の俳優陣もとにかく素晴らしい。広告社のレッドも、5,000ドルを追加で要求して、なんだ、コイツもまたダメな社長で、ただのイヤな奴かと思わせておきながら、自分をボコボコにしたディクソンにオレンジジュースを差し出します?あり得ない。そんな優しさどこから出てくるんだって。

思わずオレンジジュースを飲んでしまうボクがいます

また小男のジェームスに至っても、怒りに身を任せているミルドレッドに歩み寄り、常に優しい言葉をかけてくれる。「 本当はボクがハシゴを支えなくても良かったんだよ 」って。泣けるでしょ。あの優しさに。

こうして3人( ミルドレッド、ウィロビー、ディクソン )を中心とした愛と悲しみと激情の人間模様は、スピード感もありながら、温かくものすごく重厚で、それでいて時に美しい。更には、若干のやりすぎ感も否めませんが、ミルドレッドとディクソンの、実は人間味溢れる、というか、最も人間らしい姿。

アメリカ南部で起きている日常と隣り合わせの暴力や人種差別。そして時々クスッと笑えるブラックジョークを入れつつ、登場人物たちの怒りや復讐が、愛と赦しへ移っていく、不思議な物語。いやはや、本当に素晴らしい映画です。

映画を観た後、悲しみにも包まれながら、なぜかどこか清々しい。この新感覚の映画を是非皆さんにもオススメしたいです。

( 看板は裏側が写ってるでしょ )

結局怒りは何も解決しない

署長のウィロビーがなぜ、同僚も、町の住民も、もっと言ったら母親までも「 ダメ警官 」と思っているディクソンを可愛がり、慕うのか。それは、ミルドレッドが投げた火炎瓶で、警察署が炎に包まれながら読んでいた最後の手紙にもこんな事が書かれていましたよね。

「 甘ったるいかもしれないけど、大事なのは愛だぜ。愛。 」( 若干コトバは違いますよ。)

全ては愛。愛でしかない。この映画の最も伝えたいところでもあるんじゃないかな。

はー。

ここまで書いたけど、正直まだ書き足りない。そして書いてる途中でまた劇場へ足を運びたくなったのはここだけの話にしておきますね。

ちなみにエンディングについてはここでは触れません。

なぜならそれぞれがそれぞれのエンディング、「 この後どうなったのか? 」を想像し、この映画を完成させてほしいからです。

もしかしたらこのスリービルボードの監督、マーティン・マクドナーはこの映画にそんな意味も込めていたんじゃないかな。って勝手に思っています。

マーティン・マクドナー監督 スリー・ビルボード」は「 自分史上最も希望に満ちた映画 」

本作はアイデアと主人公だけで書き始めたので、どんな展開になるか分からなかった。しかし書き進めるにつれ、それぞれのシーンが別の奇妙なシーンへと導いてくれたんだ。(警察署長)ウィロビー(ハレルソン)があんなことになるとは思わなかったし、(ウィロビーの部下)ディクソン(ロックウェル)にも驚いた。彼は物語の中で1番大きく変わるキャラクターだ。だがコメディやダークさは別として、根底にはずっと希望がある。それには撮影中も編集中も驚かされたと、自分でも思ってもみなかった方向にドラマが転がっていったそうだ。

映画.comより一部抜粋 >

こんな脚本書いてみたい。この仕事してる人は誰もが嫉妬するような演出、ストーリーになっているんじゃないでしょうか。

映画のある生活。ボクはこんな映画に出会えてとっても幸せです。いつかこんな仕事がしたいな。

そうそう。1度この映画を観た方は、ボクのこの感想を読んでから、もう1度観にいくと更に面白く感じるかもしれません。最高の映画は2回以上観る。これ、ボクの中での鉄則です。

いやー。映画って本当に素晴らしい。さよなら。さよなら。さよなら。

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